「シェイクス2022」を観に行きました。
30-DELUX OSAKA | ミュージカル シェイクス2022
観劇は実はプレショ以外では去年の3月ぶりで、昨年は2月に目が疲れまくってるのに國藤剛志さんの「オーサカヘブン」、3月にTeamAZURA大阪の「Unrequited Love」を見に行ってました。年1~2回ほどプレショ以外の観劇をするのが本当に楽しみ。
たまにこの小さい箱の役者さんの全力を浴びる感じが、映画と違ってまたいい。
久しぶりのお芝居で、とにかく前説からワクワクしていました。
視力が下がっているせい(職業病)で、かなり苦戦をしたのですが、とにかく近い。めちゃくちゃ近い。役者さんの表情がバッチリ見れる。
序盤は本当に面白い小ネタから助走スタート。
妖精パック登場あたりからついに笑いがこらえきれなくなる。
私はWICHさんの声がすごく大好きということを脳に刻み込んでいて、一方お顔が全く把握できていないのですが(これはプレショの覆面やキャラメイクの都合上、私の記憶力がゴミということを意味する)、声を聞いた瞬間に「やだ好き~~~!ウィッチさんじゃ~~~~ん!!」ってなりました。
ゆるくゆるくロミオに肉薄していく妖精。というかそれ以前にロミオくせ強ッ!(笑)
ジュリエット、歌のビブラートすごッ!うわッミュージカルだ!
…と思ったのに劇中歌は控えめでしたね。ミュージカルばりばり大好きマンなのでロミジュリミュージカルやる…?…やらないのか…そっか…。
そして…それは夢だった。夢オチでよかった、誰もが思うでしょう。そうではないこの主人公江口の能力(スタンドなの?)が予知夢。
昔に予知夢が的中したことがあるのを示唆する描写がありますね。ライティングが雰囲気出ていてよかったです。
その後、現実世界ではオープニングから温めてきた笑いパートをどんどん盛り上げていきます。
前半を舞台監督が匠に話しかけるところまでと考えたとき、後半につれて空気感が盛り上がっていくのがすごい。
そして予知夢が…現実になりそうなシチュエーションにどんどん変化をしていく。
1日、数時間の間に、ここまで現実に近づいたら普通発狂しますよね。江口さんのメンタルはすごいな?
その一方で、久しぶりの再会を果たした、かつての仲間・匠さん。やばいなめちゃくちゃかっこいいです、足長ッ!5メートルある!!!
そして洋服と刀のマッチが素晴らしい。本当に似合う。
あれです洋画の「高慢と偏見とゾンビ」の彼がスーツに日本刀なんですけど、あれです。親和性がある。気高い組み合わせといいますか。
最初から出演者の皆さんの小ネタもたくさんでいっぱい笑いましたありがとうございます。
千秋楽、劇場でたのが19時ぐらいだったような…そんなにたくさん詰めてくださってたんですね。
ありがとうございました。
同郷滋賀県出身の役者である枝尚紀さんが、匠さん役をやっていますので、DVDの宣伝をば。しておきます!
殺陣が身軽で美しいんです。
今年の夏含め、また楽しみだなあ。繁忙期を抜けたら一杯楽しもうと思います。
ネタバレなし部分はここまで、以下がっつり感想を記録用に書いていきます。
★
ここからネタバレ。
-ストーリーに関して。
「シェイクス」という長寿作品を今回ではじめてみるのに、予習もなしにいったため、真相のところがよくわからないまま見ました。
そこで、テーマの一つである「予知夢」の伏線回収ができたのかわからなかったのですが、たぶん江口さんと匠さんは「江口さんの予知夢」を乗り越えたのかなと思いました。そのほか、色々感じてビシャビシャに泣きました。
改めて、「江口さんの予知夢」の劇中での取り扱いについて。
江口さんが見る「予知夢」がさんざん実現することを、劇中の描写「おにいちゃんはね、役者とサラリーマンになってた!」という台詞と、劇団をやっていたがその後劇団が解散し、現場統括する会社員?サラリーマン?になっているという現在の江口さんの状況で補完・補強されている。
その実現性を知っていたメイちゃん・匠さんは、事故の予知夢を聞いたとき、どう思ったでしょう?
いや、起こってしまったことを今さら何ということもないですが、それは起きた。現実になった。
それを互いに体験しているというのに、再会して話を聞いても、また突っ込んでいく匠さん。実際にメイちゃんは病気がもとで体調が悪く、それが要因の事故でもあったかもしれない。
でも、「予知夢」は当たっている。
「予知夢の実現性は結局なんだったのか?」という疑問には、ハリウッドにいるところで実現しなかったことを示して答えている。
(いや、本当に示しているのか?)
予知夢という能力をもて余している江口さんが、「勘違いやすれ違いの連続」という一説でその予知夢が「勘違いだったんだぜ…」と納得するには若干苦しい流れがあったかなと思いました。
「どうなっても知らんぞ!」「望むところよ!」の段階で、二人は予知夢の実現性について否定をしていない。江口さん自身が予知夢の実現性についてもて余している云々の思考を手放している感もありました。その部分では、友情は…素晴らしい。
全体の流れが美しく、過去と現実の組み立ても素晴らしいお話でしたが、予知夢に関する解釈を江口さんの口から語られてほしかったなと思いました。
最後はメイちゃんで締めたところが、「江口さんの中で生きているメイちゃん」が代弁しているとしても、示唆的であるべきじゃなかったんじゃ…と感じたからです。そこの一節だけ欲しいなと思ってしまいました。
何故かというと、予知夢が良く当たると思っている江口さんの口から発されなければ「ただの一般論」を述べているようにもとれたからです。
「そうかもしれない、」という匠さんも「予知夢は取り越し苦労だったなぁ」などとは言ってない。メイちゃんに関して匠さんが殺したということは「勘違い」かもしれないんですけども。
ここまで、最後までボルテージをあげておきながら、何通りもみる夢の中で、当たる夢を描写して予知夢の確実性を補強していっているのに、「最後は勘違いだったぜ!」とはなかなか解釈に至りづらいといいますか。
そういえば面白い考察をしている方がいらっしゃって、江口と匠がハリウッドでやるオープニングアクトこそ予知夢が実現する時だった(先の未来だった)のではないかと。
実に面白いが、それが事実だったらこの劇、ジャンルはホラーですか…?
私は最初、「乗り越えた説」を推しましたが、もしかすると「転倒対策をして事故起きたけど、匠無事説」もあったかもしれません。マクベス転倒するってんならマット敷いとこ、みたいな感じですね。ここに関しては想像力を掻き立てられます。
「予知夢」は、いつの時代も様々な題材に挙げられるものだなあと、常々思います。
予知夢のメカニズムが、「頭の中で寝ている間に何度も色々とシミュレーションを重ねるうちに、未来のパターンを重なったものを夢として記憶している…」というような構造だったとして、多くの人は「あああれね、」と予知夢めいたことに心当たりがあると思います。
そして、題材に取り上げられるものでは、「誰かの死」の方が扱われることが多いと思います。
私は舞台とか映画とか…あらゆる作品で、「死」を扱ったものがここしばらくずっと地雷だったのですが、久しぶりに感想を書くことができました。
それだけの力があったと思います。考えさせられる部分があったというところだけでも、この作品を見に行けて本当によかったと思います。
…2021年のプレショもなにげに地雷原踏み荒しだったんですけど、そこはコラさんとエースだから乗り越えられた。
江口さんは少し描写がありましたが、心の中で何となく支えとしてメイちゃんと過ごしていましたね。
一方匠さんはどんな風にメイと心の中で一緒にいるのだろうかと思いました。それを8年間?…いやいや正直、耐えられる自信がない。
それを胸にしまいながら同じ業界で仕事を続けるのは、苦しくて仕方がない。待って、トラファルガーは13年?…きつい…。
心の中で反芻すること・想像することの辛さは理解できます。
それを思うと、この劇中の二人が背を向けてメイちゃんを見上げるラストのシーンが本当に…言葉にならないぐらい尊くて、二人を見守る存在として祝福しているようで。
悲しいし辛いし引き裂かれそうで、メイちゃんがいないことが事実で現実であることを叫んで否定したくなるのに、「ああ見守られている、今回は大丈夫だと言ってる」と感じるシーンでした。メイちゃんは守護天使さんですね。
実際自分だったら耐えられないし、同情してしまってびちゃびちゃに泣いてましたけれども。
ラスト前シーンで、上西さんが「メイさんと見守ってますよ」と言ったとき、「こいつだな江口さんの予知夢のセオリー歪めたやつ」と思いました。
2回目でそう思ったので、1回見ただけではその想像に至らなかったかもしれません。
大事、リピート。
-その他もろもろ。
・舞台監督さんもちろん柄谷さんでお会いしたかった。でも杉本さんの舞台監督さんもとっても面白かったです。
・「ラ行」が言えない倉木ユタカさんの台詞、2回目よく聞くと「ラ行」をしょっぱなから言えないのに気づきます。すごい、言えてる風の活舌で観客にも一見わからないようになってるのが段々と強調されていくの面白いです。
・「ハムレット」と現実世界の平行演出シーン、たまらなく美しかったです。もっと見たかった…。台詞のかぶせも絶妙なんですが、亡霊と踊る蘭子さんも面白くて、笑いと技巧の凝らした演出だなと思いました。
・可愛さんが可愛すぎる…。これは誰でも心打ちぬかれるのでは…。
・メイちゃんの過去シーンの殺陣、めちゃくちゃ美しくて踊っているようで斬っていて、きゃあああとなりました。劇団シェイクスではメイちゃん推しで決まりですね。
・あの劇団にどれほどの人が熱狂したのか、ちょっかいを出していた上西さんが白状するところで分かる気がします。「あの江口さん」が居ると聞いて、出資しましょうか。殺陣演出家が必要なら「あの匠さん」でしょう。…的な根回しをユタカさんにしてそう。アンタ石油王だなさては?(笑)
思い出せばたくさん。DVD届いたら見てまた噛みしめます。
ありがとうございました!